お気に入りのアコギを、もっと大きな音で鳴らしたいと思ったことはありませんか。生の響きが好きで買った一本も、ライブや配信で使おうとすると「音を拾う難しさ」にぶつかるものです。
この記事では、普通のアコギにピックアップを後付けして、自分だけのエレアコを作る方法を解説します。種類ごとの違いから、自分で行う作業の手順、お店に頼んだ時の費用まで具体的にまとめました。
読み終わる頃には、大切な楽器のポテンシャルを最大限に引き出す準備が整います。アンプから出る豊かなサウンドを手に入れて、音楽の楽しみ方を大きく広げましょう。
アコギにピックアップを後付けするメリット
「マイクを立てれば十分」と考える人もいますが、実はピックアップにはマイクにない利点がたくさんあります。自由な動きができるようになるだけでなく、音作りの幅が格段に広がるからです。
今のギターの音色を壊さずに、現代的な利便性を手に入れられるのは後付けならでは。まずは、エレアコ化することであなたの演奏環境がどう変わるのかを見ていきましょう。
ライブハウスの大音量で演奏できる
マイク一本で生音を拾う場合、少し動くだけで音量が変わったり、スピーカーの音を拾って「キーン」と鳴ったりします。ピックアップを付ければ、ギターから直接信号を送れるため、どんなに騒がしい場所でも安定した音を届けられます。
足元のモニタースピーカーから自分の音をしっかり返せるので、バンド演奏でも埋もれることがありません。激しく動いても音が途切れない安心感は、ライブパフォーマンスの質を劇的に上げてくれます。
エフェクターを使って音作りを楽しむ
エレアコ化すれば、エレキギターのように足元のスイッチで音を加工できるようになります。リバーブを深くかけて幻想的な響きにしたり、コーラスを混ぜて厚みを出したりと、遊び方は自由自在です。
生音では絶対に不可能な、重厚で広がりのあるサウンドを自分の手で作れるようになります。曲の途中で音色を切り替えるような、プロさながらの演出も手元一つで完結します。
宅録や配信の音質を向上させる
家で録音や配信をする時、マイクだと近所の騒音やエアコンの音が入ってしまいがちです。ピックアップ経由でオーディオインターフェースに繋げば、ギターの音だけをクリアに記録できます。
マイクの位置を気にする必要がなく、いつもの姿勢で弾くだけでプロ級のクリーンな音が録れます。「せっかくの演奏にノイズが入った」という失敗もなくなり、作品作りに集中できるようになります。
アコギに後付けするピックアップの種類
後付けピックアップには、大きく分けて4つのタイプがあります。それぞれ音の拾い方や、得意なジャンルが全く異なるため、自分の好みに合わせて選ぶことが大切です。
構造によってはギターに穴を開ける必要があるものや、サウンドホールに挟むだけの簡単なものも存在します。それぞれの特徴をしっかり押さえて、後悔しない選択をしましょう。
音が太くノイズに強いマグネティック
エレキギターと同じ仕組みで、弦の振動を磁石で拾うのがマグネティック型です。サウンドホールにカチッと挟むだけで装着でき、ボディを傷つけにくいのが最大の魅力と言えます。
音色は少しエレキ寄りの太いサウンドになりますが、パワフルでノイズが少ないため扱いやすさは抜群です。L.R.BaggsのM1のように、ボディの叩く音まで拾える進化型も最近の主流になっています。
立ち上がりが早く歯切れ良いピエゾ
ブリッジのサドルの下に埋め込み、弦の圧力を電気に変えるのがアンダーサドルピエゾです。多くの一流メーカーが採用している方式で、輪郭がはっきりした「チャカチャカ」という鋭い音が特徴。
ハウリングに非常に強く、大人数のバンドの中でも音が埋もれない力強さがあります。一方で、サドルの下を加工する必要があるため、取り付けには少しだけ専門的な作業が必要です。
豊かな箱鳴りを再現するコンタクト
ボディの内部にペタッと貼り付けて、板の振動を直接拾うのがコンタクトタイプです。ギター全体が鳴っている「箱鳴り感」を最も忠実に再現できるため、生音に近い響きを求める人に向いています。
ソロギターでボディを叩く奏法をする人にとっては、叩いた音がパーカッシブに響くため非常に重宝します。ただし、振動に敏感な分だけハウリングが起きやすいため、大音量のライブでは少し工夫が求められます。
繊細なニュアンスを拾う内部マイク
ギターの内部に小さなコンデンサーマイクを設置し、空気感を丸ごと拾う贅沢なタイプです。他の方式では出せない、空気を含んだようなリアルな高音と深みが手に入ります。
単体で使うよりも、ピエゾやマグネティックと混ぜて使う「ブレンダータイプ」が一般的です。L.R.BaggsのAnthemのように、マイクのリアルさとピエゾの芯の強さを両立したモデルがプロの間で大ヒットしています。
自分のスタイルに合うピックアップの選び方
種類の多さに迷ったら、「どこで、誰と弾くか」を想像してみるのが一番の近道です。家でのんびり弾くのと、ドラムがいるバンドで弾くのとでは、最適なピックアップは変わります。
また、電池の有無によっても使い勝手が大きく異なります。自分のライフスタイルに照らし合わせて、長く使い続けられる一本を絞り込んでいきましょう。
演奏する場所やライブの規模で選ぶ
カフェや静かな場所で弾き語りをするなら、音色のリアルさを重視してコンタクトやマイク系を選びます。生音に近い温かみのある音が、聴き手との距離をグッと縮めてくれるからです。
反対に、文化祭やライブハウスでバンドと合わせるなら、ハウリングに強いピエゾやマグネティック一択。せっかくの演奏がハウリングで台無しにならないよう、まずは「現場の音量」を基準に考えましょう。
電池が必要なアクティブタイプを検討
ピックアップ本体にプリアンプを内蔵し、9V電池などで駆動するのがアクティブタイプです。出力が強く、長いケーブルを繋いでも音が劣化しにくいのが現代のスタンダード。
ギター側で音量調節ができるモデルも多く、演奏中に手元でサッと調整できる利便性があります。電池交換の手間はありますが、それ以上にノイズの少なさと力強いサウンドは大きな武器になります。
手軽さを重視してパッシブタイプを選ぶ
電池を使わないパッシブタイプは、非常に軽量でギターの生音への影響が最小限で済みます。構造がシンプルなため故障も少なく、取り付けも比較的簡単に行えるのが特徴です。
ただし、そのままアンプに繋ぐと音が細くなりやすいため、外部のプリアンプを併用するのが鉄則。「ギター本体には極力重いものを入れたくない」という、こだわり派の方に根強い人気があります。
ピックアップを自分で取り付ける際の手順
「自分でやってみたい」という方のために、基本的な取り付けの流れを説明します。最近はDIY向けのキットも増えており、道具さえ揃えば自宅でエレアコ化することも可能です。
ただし、一歩間違えると大切なギターに傷をつけてしまう作業でもあります。各ステップの内容をしっかり把握して、慎重に進める自信があるか確認してください。
エンドピンの穴を12mmに広げる
アコギの底にあるストラップピンの穴を、ジャックが通る12mmサイズに広げるのが最初の難関です。元々の穴は約8mm程度なので、少しずつ丁寧に削っていく必要があります。
いきなり太いドリルを使うと木材が割れる危険があるため、手動のリーマーを使うのが安全です。12mmジャストではなく、ジャックがスムーズに通る「遊び」を意識して削るのがコツです。
ピックアップ本体をボディ内に固定する
マグネティック型ならサウンドホールにネジで固定し、ピエゾならサドルの下にセンサーを通します。コンタクト型は、ブリッジの真裏あたりに両面テープなどで接着するのが一般的です。
この時、センサーの位置が数ミリズレるだけで、低音ばかり出たり音が小さくなったりします。本番の固定をする前に、仮止めしてアンプから音を出し、バランスの良い場所を根気よく探しましょう。
配線が暴れないように内部で整理する
ボディ内部でケーブルがブラブラしていると、演奏中に「カチカチ」と異音が混じってしまいます。付属のコードクリップやテープを使い、ボディの内側にしっかり固定してください。
特にピエゾの配線は繊細なので、無理に引っ張ったり折ったりしないように注意しましょう。配線が木材に直接触れないよう浮かせて固定すると、不要な振動ノイズを防ぐことができます。
失敗を防ぐための取り付け加工のポイント
後付け作業において、最も神経を使うのが「音の伝わり方」を左右する細かな調整です。ここを適当に済ませてしまうと、どんなに高級なピックアップを付けても安っぽい音になってしまいます。
プロのリペアマンが意識している、ちょっとした「コツ」を知っておくだけで完成度は変わります。自分で作業するなら、以下の3点だけは絶対に妥協しないでください。
サドル下の溝を掃除して密着させる
アンダーサドルピエゾを付ける際、サドルが入る溝の底にゴミや削りカスがあると致命的です。センサーが浮いてしまい、弦ごとの音量バランスがバラバラになってしまいます。
エアダスターや細いブラシを使い、溝の底が平らで清潔な状態であることを確認しましょう。サドルとセンサー、そしてブリッジの底が「面」でしっかり密着することが、太い音を出すための絶対条件です。
リーマーを使って少しずつ穴を広げる
エンドピンの穴あけに電動ドリルを使うのは、初心者にはおすすめしません。回転の衝撃でボディの塗装がパリッと剥がれたり、最悪の場合は板が割れたりするからです。
時間はかかりますが、手回しのリーマーで円を描くように少しずつ削り広げてください。最後の1mmは紙やすりで整えるくらいの丁寧さを持つことで、プロ級の綺麗な仕上がりになります。
内部の配線が木材に触れないようにする
内部のケーブルがボディの裏板などに触れていると、特定の音を弾いた時に共振して「ビビり」の原因になります。配線は最短距離を通しつつ、余裕を持たせた状態で固定するのが理想です。
また、ジャックのナットもしっかり締め込んで、演奏中に緩まないようにしましょう。「見えない場所こそ丁寧に」という意識が、ライブ中のトラブルを未然に防ぐことに繋がります。
ピックアップ取り付けにかかる費用の目安
自分でやるか、お店に任せるか。判断の基準になるのはやはり費用の合計ですよね。
道具を一から揃える手間を考えると、実は楽器店に依頼した方が安上がりで確実な場合もあります。パーツ代とは別にかかる、作業に関わる費用の目安をテーブルにまとめました。
| 依頼先・内容 | 費用の目安(工賃) | 特徴 |
| 自分で作業(工具代) | 3,000円〜5,000円 | リーマーや配線固定具の購入費 |
| 楽器店(簡易取付) | 5,000円〜8,000円 | マグネティック等の加工が少ないタイプ |
| 楽器店(本格取付) | 10,000円〜15,000円 | ピエゾやマイク等の穴あけ・調整込み |
自分で作業する場合の工具とパーツ代
ピックアップ本体の価格に加え、作業用のリーマー、マスキングテープ、鏡、掃除用具などが必要です。これらの工具は一度買えばずっと使えますが、一本だけのために揃えるのは少し勇気がいります。
もし失敗してボディを割ってしまったら、修理代で数万円が飛んでいくリスクもあります。「工作が得意で、自分のギターを深く知りたい」という好奇心が強い人に向いている選択です。
楽器店に依頼した時の工賃の相場
多くの楽器店では、ピックアップの取り付けを工賃1万円前後で引き受けてくれます。プロに任せれば、穴あけはもちろん、サドルの高さ調整まで完璧に仕上げてもらえます。
特にピエゾタイプはサドルの底を削る必要があるため、素人がやると弾き心地が変わってしまうことが多いです。安心とスピードを買うつもりで、大切なギターなら迷わずプロに任せることをおすすめします。
複数箇所の加工が必要な場合の追加料金
マイクとピエゾを両方付けるような複雑なシステムの場合、配線作業が増えるため工賃が上がることもあります。また、古いギターで木材の状態が悪い場合、補強のための追加費用がかかるかもしれません。
見積もりを出す際は、自分がどの程度の音質を求めているかをしっかり伝えましょう。「ライブで即戦力にしたい」と伝えれば、それに見合った最適なセットアップを提案してくれます。
音質をさらに高めるための周辺機材のコツ
ピックアップを付けただけでは、実はエレアコのポテンシャルを半分しか出せていません。アンプに繋ぐまでの間に「ある機材」を挟むだけで、音は劇的に「生っぽく」なります。
ライブハウスの大きなスピーカーから出すなら、これらの機材は必須とも言えます。ピックアップとセットで検討したい、魔法のアイテムを紹介します。
外部プリアンプで音の太さを調整する
ギターから出た微弱な電気信号を整え、音を力強くしてくれるのがプリアンプです。特にパッシブタイプを使っているなら、これがないと音が細くて使いものになりません。
イコライザー(EQ)が付いているモデルなら、低音や高音を自分好みに細かく味付けできます。「Fishman Aura」のように、特定の高級ギターの音色を合成してくれる高機能なモデルも人気です。
DIを使ってノイズの混入をブロックする
ライブハウスで長いケーブルを使ってミキサーまで音を送る際、ノイズを拾わないようにするのがDI(ダイレクトボックス)の役割です。会場にあるものを使わせてもらうこともできますが、自前で持っておくと常に自分の音が保てます。
アクティブDIなら音の鮮明さが上がり、プロのような芯のあるサウンドになります。プリアンプとDIが一体になったモデルを一台足元に置くだけで、音作りの悩みはほぼ解消されます。
フィードバックサプレッサーでハウリングを防ぐ
大音量で「ブーン」「キーン」と鳴ってしまうのを防ぐのがサプレッサーです。特定の周波数だけをカットして、ハウリングを瞬時に抑え込んでくれます。
サウンドホールを塞ぐゴム製の「サウンドホールカバー」を併用するのも非常に効果的です。トラブルを気にせず演奏に没頭できる環境作りが、ライブ成功の何よりの秘策となります。
アコギをエレアコ化する際によくある失敗
最後に、多くのギタリストが通ってきた「失敗あるある」を共有します。事前に知っておくだけで、同じ落とし穴にハマるのを防げるはずです。
改造は一度やってしまうと元に戻すのが大変な作業。焦って進める前に、これらの注意点を頭の片隅に置いておいてください。
穴あけを失敗して木材を割ってしまう
最も悲しい失敗が、エンドピンの穴あけ中に板を割ってしまうことです。ドリルで無理に押し込んだり、逆回転させたりすると、木目の方向に沿ってピシッと亀裂が入ってしまいます。
一度割れた木材は、修理しても跡が残ることが多く、ギターの価値を下げてしまいます。自信がないなら、この穴あけ作業だけでも楽器店に依頼するのが一番の安全策です。
サドルの高さが変わって弾きにくくなる
アンダーサドルピエゾを挟むと、その厚みの分(約1mm前後)だけサドルが高くなります。わずかな差ですが、指の力加減が変わってしまい、今まで弾けていたフレーズが弾けなくなることもあります。
センサーの厚み分だけ、サドルの底を水平に削って高さを合わせる作業が必要です。この「水平に削る」という作業が意外と難しく、音量バランスを崩す原因にもなりやすいポイントです。
配線がブーンと鳴るノイズに悩まされる
取り付けた後に、アンプから「ジー」「ブーン」というノイズが出る場合があります。これは配線のシールドが不十分だったり、ジャックの接触不良だったりすることが原因です。
安すぎるピックアップや、不適切な配線固定がこのトラブルを招きます。特にライブ直前にノイズが出るとパニックになるため、事前のチェックと信頼できるパーツ選びが欠かせません。
まとめ:自分だけのエレアコで新しい演奏体験を
アコギのピックアップ後付けは、あなたの愛機を現代のステージに解き放つための「進化」です。生音の魅力を守りつつ、最新のテクノロジーを味方につければ、音楽の可能性は無限に広がります。
- ライブハウスの大音量や配信でも、ノイズのないクリアなサウンドを届けられる。
- マグネティック、ピエゾ、コンタクト、マイクの4種類から自分の好みの音を選ぶ。
- 電池が必要な「アクティブタイプ」なら、出力が安定し音作りもしやすい。
- 自分で取り付けるなら、12mmの穴あけとサドルの密着に細心の注意を払う。
- 楽器店に依頼する場合、工賃1万円前後で完璧なセットアップが手に入る。
- プリアンプやDIを併用することで、生音に限りなく近い豊かな響きを作れる。
- 2026年現在はUSB充電式など、さらに便利な最新モデルも登場している。
まずは**自分のアコギの「サドルの溝」を覗いて、ピエゾが入る隙間があるか確認してみてください。**その一歩が、新しいステージへの扉を開くきっかけになります。
