ギタリストなら一度は憧れるギブソンのレスポール。でも、いざ手に取ると「重いし、高い音が弾きにくい」と戸惑う人も多いはずです。
この記事では、レスポール特有の個性を攻略し、快適に弾きこなすための具体的なコツを解説します。重さやハイフレットの壁を乗り越えれば、レスポールならではの太いサウンドを自由に操れるようになります。
レスポールが弾きにくいと感じる理由
楽器店で見惚れて買ったレスポール。家に持ち帰って弾いてみると、座っているだけで足が痺れたり、指が届かなかったりと、想像以上の扱いづらさに驚くことがありますよね。
ストラトキャスターのような万能型と比べると、レスポールはかなり癖のある楽器。まずは、多くの人が「弾きにくい」と壁にぶつかるポイントを整理して、その理由を探ってみましょう。
4kgを超えるボディの重さ
レスポールの平均的な重さは4kgから4.5kgほど。3.2kg程度のストラトキャスターと比較すると、1kg近く重い計算です。
15分も立って練習すれば、肩にずっしりと重みがきます。この重量が低音の迫力を生みますが、最初は体力の消耗に驚くはずです。
厚みのあるネックジョイント部分
レスポールは、ネックとボディをくっつける「ヒール」と呼ばれる場所が四角くて分厚い作りになっています。
15フレットより上を弾こうとすると、手のひらがボディの角に当たってしまいます。これが、高い音を出す時に指を動かしにくくさせている一番の原因です。
左右非対称なボディの重心バランス
ストラップピンの位置の関係で、レスポールは構えた時の重心が独特です。
手を離すとヘッドが下がったり、ボディが垂直に倒れようとしたりします。演奏中にギターの位置が安定しないことが、弾きにくさに拍車をかけています。
重いレスポールによる肩や腰への負担を減らすコツ
「重さはレスポールの美学」と言われますが、実際に腰を痛めては練習が続けられません。プロのギタリストたちも、実は色々な工夫をしてその重さと付き合っています。
特に長時間のライブや練習を乗り切るためには、道具の力を借りるのが賢い選択です。ここでは、今日からすぐに試せる重さ対策を具体的にお伝えします。
6cm以上の幅広ストラップを使用する
細いストラップではなく、幅が6cm以上ある太いものを選びましょう。
肩に当たる面積を広げることで、1点にかかる重さを分散できます。素材も柔らかい革製を選ぶと、肩への食い込みがさらに和らぎます。
滑り止め付きのショルダーパッドを装着する
今使っているストラップに後付けできるパッドも有効です。
肩からギターがズレにくくなるため、無意識に体に力が入るのを防げます。位置が固定されるだけで、重さの感じ方はかなり軽くなるものです。
足を開いて重心を低く構える
足を肩幅より少し広く開いて、どっしりと構えるように意識してください。
上半身だけで支えようとせず、下半身全体のクッションを使うイメージです。重心を低く保つと安定感が増し、肩への負担が驚くほど軽減されます。
届かないハイフレットをスムーズに弾くための構え方
レスポールのハイフレット演奏は、手の小さい人にとっては大きな課題です。ボディの厚みが邪魔をして、薬指や小指が届かないという悩みをよく耳にします。
しかし、構え方を少し工夫するだけで、その「届かない」は解消できます。力任せに押さえるのではなく、物理的に指が届く角度を作ってあげましょう。
親指をネックの裏側中央まで下げる
低いフレットではネックを握り込んでいても良いですが、高い音を弾く時は親指を下げます。
親指をネックの裏側、中心より少し下あたりに添えてみてください。親指の支点を下げることで、他の4本の指が自由に動けるスペースが生まれます。
ギターのヘッドを斜め上に持ち上げる
ギターを水平に保つのではなく、ネックを斜め45度くらいに立てて構えます。
こうするとボディの角が邪魔にならなくなり、高いフレットまで手が回り込みやすくなります。見た目にも躍動感が出て、テクニカルなプレイがしやすくなる姿勢です。
ボディを右太ももに乗せて安定させる
座って弾く時は、ギターのくびれを右足の上に乗せ、ボディを体に密着させます。
この時、ボディを少しだけ上に向けるように倒すと、指板がよく見えてハイフレットも楽になります。ネックを手前に引き寄せすぎないことが、手首の角度を保つポイントです。
レスポール特有の太いネックを握り込むポイント
レスポールのネックは、フェンダー系に比べて丸くて太いのが特徴です。手が小さい人にはきつく感じられますが、実はこの太さが「音の太さ」を支えています。
無理に指を広げようとするのではなく、レスポールの形状を味方につける押さえ方を覚えましょう。少しの設定変更と意識の持ち方で、指の疲れは劇的に変わります。
弦高を1.5mm程度まで下げてみる
レスポールの太いネックを攻略するには、弦の高さを調整するのが一番の近道です。
1弦側を1.5mm、6弦側を2.0mm程度まで下げれば、軽い力で弦を押さえられるようになります。ネックが太くても、押さえる力が少なくて済めばスムーズに演奏できます。
親指で6弦をミュートするフォームを作る
太いネックを逆手に取り、親指をネックの上から出して6弦を軽く触るスタイルを試してください。
こうすることで左手全体が安定し、他の指でコードを押さえる時の支えになります。ガシッと握り込むフォームは、レスポールらしい力強い音を出すのにも役立ちます。
指を立てて押さえる感覚を身につける
ネックが太い分、指が寝てしまうと隣の弦に触れて音が止まってしまいます。
指の第一関節をしっかり曲げて、弦に対して垂直に指先を立てる意識を持ちましょう。指を立てることで、太いネックでも余計な力を入れずに綺麗な音を鳴らせます。
複雑なボリュームとトーン操作を使いこなす手順
レスポールには、ボリュームとトーンのノブがそれぞれ2つずつ付いています。最初は「どっちを回せばいいの?」と混乱しますが、慣れると手元だけで多彩な音を作れます。
この4つのノブは、ただ音量を変えるためだけのものではありません。ライブ中に足元のエフェクターを踏まなくても、ギター本体だけで音色を操る手順を覚えましょう。
常に10ではなく8を基準に設定する
ギターのボリュームをいつも全開(10)にするのではなく、8くらいを基本にします。
ソロの時だけ10に上げ、伴奏の時は7に下げるといった、音量の「余白」を作っておくのがコツです。ボリュームを少し絞るだけで、歪みの量も変わり、表情豊かな演奏ができます。
スイッチの切り替えタイミングを練習する
ピックアップを切り替えるトグルスイッチを、曲の展開に合わせて動かしてみましょう。
フロントは甘い音、リアは鋭い音、と役割をはっきり分けると使いやすくなります。曲のサビで一気にスイッチを切り替える動作は、演奏をドラマチックに見せてくれます。
フロントとリアの音量差を事前に整える
フロントピックアップの方が音が大きく聞こえやすいため、あらかじめノブでバランスを調整しておきます。
スイッチを切り替えた時に、音量の差が気にならない位置を鏡の前で見つけておきましょう。ミックスポジション(中間)での絶妙な音作りは、レスポールならではの楽しみです。
ストラトキャスターと比較したレスポールの弾き心地
もしあなたがストラトキャスターのようなギターから持ち替えたなら、その違いに戸惑うのは当然です。レスポールはただ重いだけでなく、設計そのものが大きく異なります。
しかし、その違いこそがレスポールの魅力でもあります。ストラトと比較して、レスポールが演奏面で優れているポイントを具体的に見てみましょう。
| 比較項目 | レスポール | ストラトキャスター |
| 弦の長さ | 628mm(短い) | 648mm(長い) |
| 弦の張り | 柔らかい | 硬い |
| ブリッジ | 高め | 低め(平ら) |
| ボディの角 | 角張っている | 丸い(コンターあり) |
弦のテンションが柔らかいミディアムスケール
レスポールは弦の長さが短いため、弦の張りがストラトよりも柔らかく感じられます。
これにより、チョーキングやビブラートが軽い力でスムーズに行えるようになります。指が痛くなりやすい初心者にとって、この「弦の柔らかさ」は大きなメリットです。
ブリッジの高さがピッキングに与える影響
レスポールのブリッジはボディから浮いた高い位置にあり、右手の置き場が少し高くなります。
これが、力強いダウンピッキングや高速なストロークをやりやすくさせています。ストラトで「ボリュームノブに手が当たってしまう」という悩みも、レスポールなら解消されます。
弾きやすさを重視したレスポール選びの目安
これからレスポールを買う人や、買い替えを考えているなら、モデル選びで「弾きやすさ」を最優先しましょう。伝統的な重いレスポールだけでなく、最近は扱いやすさを重視したモデルも増えています。
見た目はクラシックなレスポールでも、中身が進化しているギターを選ぶのが失敗しないコツです。以下の3つのポイントをチェックしてみてください。
チェンバード加工された軽量モデルを探す
ボディの内部をあえて空洞にして重さを軽くした「チェンバード」や「ウェイトリリーフ」というモデルがあります。
これらは4kgを切る重さのものが多く、肩への負担が劇的に少なくなります。「重すぎて練習が辛い」となる前に、まずは軽い個体がないか探してみましょう。
ヒールレスカットが施された個体を選ぶ
最近のレスポールには、ハイフレットの角を丸く削り取った「ヒールレス」加工のモデルが存在します。
これなら、手の小さい人でも22フレットまでストレスなく指が届きます。伝統的な見た目よりも弾きやすさを取るなら、この加工は必須のチェック項目です。
スリムテーパーネックのモデルを試奏する
1960年代のスタイルを再現した「スリムテーパー」という薄いネックのモデルを選びましょう。
手の小さい日本人の手にも馴染みやすく、速いフレーズも楽に弾けるようになります。「50s」は太め、「60s」は細め、という型番の数字を覚えておくと便利です。
練習でレスポールの重さに体を慣らすステップ
いきなりレスポールを完璧に弾きこなそうと思わなくて大丈夫です。まずは、その重さと独特のバランスに体を少しずつ馴染ませていく練習から始めましょう。
無理をせず、段階を踏んでいくことで、いつの間にかレスポールの重さを「心地よい」と感じるようになります。以下のステップで、体をレスポール仕様にアップデートしてください。
- まずは15分だけ立って弾き、肩に違和感が出たらすぐに座る。
- 座って練習する時も、必ずストラップを肩にかけて位置を固定する。
- 全身の力を抜き、ギターを体に預ける感覚でリズムに合わせて体を揺らす。
- ストラップの長さを1cmずつ変えて、一番左手が楽な高さを探る。
- 1週間ごとに立ち弾きの時間を5分ずつ延ばして、持久力をつける。
最初は肩が凝るかもしれませんが、毎日少しずつ触れることで必要な筋肉が育ちます。無理な姿勢で長時間弾くのではなく、「正しいフォームで短時間」を繰り返すのが上達の近道です。
まとめ:レスポールの個性を味方につけて演奏を楽しもう
レスポールは確かに重くて、ハイフレットも少し弾きにくいギターかもしれません。しかし、その不自由さを乗り越えた先には、他のギターでは出せない唯一無二の太く甘いサウンドが待っています。
この記事で紹介したコツを一つずつ試して、あなただけのベストな演奏スタイルを見つけてください。
- 4kg超えの重さは、幅広のストラップや正しい構え方で分散できる。
- ハイフレットは、ネックを立てて親指を下げることで指が届くようになる。
- ミディアムスケールのおかげで、弦の張りが柔らかくチョーキングが楽。
- 弦高を1.5mm程度に下げると、太いネックでもスムーズに押さえられる。
- 重さが辛いなら、内部が空洞の軽量モデルや薄いネックのモデルを選ぶ。
- ボリュームを8に設定する習慣をつけると、手元で音をコントロールできる。
- 毎日15分からの立ち弾きで、少しずつレスポールに馴染む体を作る。
まずは次の練習で、**ストラップの長さを「あと2cm」だけ短く調整してみてください。**それだけで、今まで届かなかったあの高い音が、驚くほど楽に鳴らせるようになるはずです。

